フィットネスクラブ大手が利用者層の拡大に知恵を絞っている。ティップネスやメガロスは既存店を新業態に改装。コナミスポーツ&ライフやセントラルスポーツは個別指導を強化。
フィットネス市場は長引く景気低迷や高齢化の影響で2006年をピークに縮小に転じており、各社とも満足度向上を通じ既存客を囲い込むとともに、初心者や高齢者など新たな需要を掘り起こすことで生き残りを目指す。
■ティップネスは…
JR渋谷駅から歩いて5分ほどの場所にあるティップネスの「TIP.X TOKYO(ティップ・クロス・トーキョー)」。全国に約70店を展開する同社が新業態の先駆けとして既存店を改装し、3日に営業を始めた。2階にあるスタジオ「ファンクショナルトレーニングフィールド」では、腹筋や片足跳びなどの簡単な運動を組み合わせた教室を開いている。レッスンは10分程度からと短時間のため、高齢者や初心者でも継続しやすい。会費は月1万3650円と既存店の平均よりも3500円程度高いが、マシンを使わずに身体機能を高めるトレーニングを導入するなど新たなプログラムを充実させ、授業数も約180と既存店の倍に設定。これまで「ティップネス・ワン」はじめ20~30代前半の女性向けなど一定の年齢層の利用を想定した業態を開発してきた。これに対しTIP・Xではあえて利用者層を固定せずにプログラムを開発。幅広い年齢層を対象に安定した需要の開拓を目指す。
■メガロスは…
都内を中心に23店を展開するメガロスは3月、東京・恵比寿の女性専門のフィットネスクラブを個人指導専門店に改装した。会員の体のクセや目指す体形などをもとに、個別のトレーニングメニューを作成する。1レッスン80分で、利用者がトレーナーを指名できる。改装を機に料金は月4回で5万2500円と他の既存店より高めに設定。1カ月間で120人が新たに会員登録した。同社では周囲に富裕者層が多い立地に着目した今回の店舗改装の効果を見極めた上で、似たような立地の既存店の改装も検討する。
■コナミやセントラルは…
これに対しコナミやセントラルは既存店の会員向けに、1対1で付く個別指導に対応できるプログラムやインストラクターを増やしている。会員個々人の体形や事情に通じたインストラクターが指導を通じて運動を続ける効果を明確に伝えることで、継続率の引き上げにつなげる狙いがある。
■フィットネス業界は…
日本生産性本部によると、2009年のフィットネスクラブの市場規模は4090億円。過去最高だった2006年から4%下落。大手各社とも既存店強化を通じた苦境脱却を目指しており、2011年の新規出店予定はコナミ、メガロスが2店舗。セントラルが1~2店舗。ルネサンスが1店舗。ティップネスはゼロ。大手5社で約20店あった2005年とは様変わりした。格安料金や入会費免除で顧客獲得を目指す施設が増える中、高単価のサービスがどこまで受け入れられるかは未知数。ただ、経営体力を消耗する価格競争を避け、少子高齢化が進む中で市場を再び拡大させるには、斬新なプログラムを提供するよりも、運動初心者でも手軽に継続できる環境を整えるための知恵が問われている。