上海での世界水泳が終り、来年のロンドン五輪へ向けて加速します。「上海で”金”ならロンドン行き切符を出す」と異例の決断をした日本水泳連盟。が、”金”はゼロ。メダル6個。一応、数の上では公約(5個)はクリアしたのですが、なにせ中国の勢いが凄かった。ちょっと日本は陰が薄かった。
しかし、日本チームは持久系種目での活躍が目立ちました。これはロンドンへ向け、良い兆候では…と少し喜んでいます。象徴的だったのが200バタフライ(松田丈志)、400個人メドレー(堀畑裕也)、1500自由形(宮本陽輔)。メダルは取れませんでしたが400メドレーや800リレーも良かったネ。水球も初の決勝リーグへ。ブラジルとルーマニアに初勝利。一方、前評判が高かった日本女子が競泳もシンクロも振るわなかった。残念。
持久系つまり長距離種目で良い結果が出たと言うことは名コーチが活躍する環境や土壌が国内に整いつつあることを意味します。天才スイマーを支えるためには数多くの凡才スイマーがいなければなりません。自由形やバタフライであれば天才から<学んだこと>と凡才へ<教えること>ができる。しかし、平泳ぎや背泳ぎは<学ぶこと>ができても<教えること>ができない。だから凡才→天才へと変身させることはない。結果、名コーチは生まれない。名コーチがいなければその国は決して強くはなれない。もちろん、始めから名コーチはいません。始めは、平泳ぎか背泳ぎ、特に女子の天才スイマーとの出会いがあり、アレよアレよという間に世界一になる。が、しかし、こんなビックチャンスは生涯一度だけ。一人のコーチが二人のチャンピョンを育てたケースが皆無なので、平泳ぎや背泳ぎで世界一を育てたからと言って、だから「あのヒトは名コーチだ…」とは言い切れない。そこからが名コーチになる正念場。天才スイマーが引き寄せた生涯一度の「強運」の効力が弱まる前に次の世界一を育てる。次は自由形かバラフライ。それも持久系種目。天才スイマーから<学んだ>ことを凡人スイマーへ<教える>。この流れが創れるヒトだけが名コーチの道を歩めるのです。天才→凡才→天才への循環を創れる名コーチが国内にもいる。そんなワクワクした想いでTV観戦しました。
さて、日本の陰を薄くした中国の台頭。日本の水泳界の盛衰はいつも中国の勢いで左右される。大きな壁です。まるでプールの中でシーソーゲームをしているようです。中国が浮き上がると日本は沈み、中国が沈むと日本が浮き上がる。それが今の現状です。過日、米国水泳誌が中国水泳界の特集をしました。改めて中国の英才教育は国家プロジェクトだと認識。今回、10年ぶりに世界記録を塗り替えた男子1500自由形。驚異的な泳ぎでしたが、あれが象徴的です。今の中国は30年前の東ドイツにどこか似ていますネ。余計なことですが、ドーピングは大丈夫だったのでしょうかネ。そして、中国はトップだけではなくボトムの拡大。つまりジュニアの育成も凄いとのこと。強化育成とは視点が異なりますが、小学生に水泳を習わす富裕層家庭が増えているらしい。それもパーソナル指導へのニーズが高いのだそうです。どうなんですかネ…。これも余計なことでした。
とにかく負けるな日本(中国に限らず…)。ロンドンへ向け「がんばれニッポン」
AD研究所 今野純