先日、長崎大学文教キャンパスで行われた第69回日本体力医学会大会に参加。タイトルは…
肥満中高年女性における重錘を負荷した水中インターバル速歩トレーニングの効果
口述発表。2年前に岐阜の同大会にて報告したその後の研究。
先行研究において、短期的に水中歩行では陸上に比べ換気閾値の増加が起きること、また肥満者ではその効果が減弱することを報告。この原因の一つに、水中では陸上に比べ、水圧によって心臓への静脈還流量が増加するが、一方、肥満者では、浮力による床反発力の低下がおき、下肢筋ポンプによる静脈還流量の増加が抑制され、水圧による効果を相殺すると考えた。
そこで、免荷率80%で肥満傾向の被験者に重錘負荷して免荷率70%にまで低下させると、換気閾値上昇がおき、高い強度で長時間の水中インターバル速歩トレーニングが可能となり、長期的なトレーニングの効果が向上するのではと、いう仮説を立て実験を行った。
水中で人には浮力による免荷率が発生し、胸部水位で概ね70%浮く。一般的に免荷率は水位によって変化するが、プールの水位は変えられないので、80%近く浮いている肥満者を重錘負荷して免荷率70%に調整した。
◇水中インターバル速歩トレーニングとは…
陸上におけるインターバル速歩トレーニングは、最近メディアでも取り上げられているが、水中インターバル速歩は、個々の換気閾値の10%を目標値として、きつく歩く<速歩>と、ふつうに歩く<緩歩>の3分ずつを1セットとし、それを7セット/日、4日/週の頻度目標として、8週間の長期的トレーニングを実施した水中運動。7セット+クールダウン3分=45分で、通常のアクアビクスレッスン(45分)と同等の時間で行えるように設定。
そして実験方法は、中高年女性42名(平均年齢65.9±7.3歳、平均体脂肪率35.1±5.4%)を重錘負荷しない群(免荷率80%)21名と、する群(免荷率70%)21名に無作為にわけ、水中インターバル速歩トレーニングを実施した。トレーニング前後で、自転車による負荷漸増運動によって最高酸素摂取量、換気閾値を測定した。
結果は、トレーニング後の最高酸素摂取量、換気閾値の増加量が、重錘負荷群では、しない群に比べ、それぞれ106%、166%高かった(すべてP<0.05)。これは過体重で陸上では膝や腰に大きな負担をかけられない方には、水の中だからこそできる運動となった。
<水>が良いと言われながら、何がどのように効果的なのか?まだまだ分からないことだらけ。少しずつ紐解きながら、やっぱり<水>は良かった!と言えるように今後も研究を進めていきたい。更なる研究目標は<水中抵抗>。<浮力と抵抗>は水中運動を指導する際に重要なキーワード。私たち水中運動指導者の指導にこれらのスパイスが加わって、新たな効果が生まれることにも期待しています。今後もよろしくお願い致します。
AEA/ATRI/HYDROナショナルトレーナー
大塩 琢也
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