フィットネス大再編、「お得意様」はシニア
日テレのティップネス買収の次はどこか
2014年12月下旬、日本テレビホールディングスがサントリー子会社の「ティップネス」を買収する 。2013年7月、明治スポーツプラザがセントラルスポーツに買収されて以降、これでフィットネスの再編は4件目だ。少子高齢化の中、若年会員数が伸び悩み、成熟産業ともいわれるフィットネス業界。なぜ活発なM&A(合併・買収)が起きているのだろうか。
■好調な中堅 業績を伸ばすホリディースポーツ
「第2四半期も順調。計画以上の達成ができた」…11月に行われた決算説明会で、東祥の沓名(く つな)俊裕社長は胸を張った。東祥は「ホリデイスポーツクラブ」を全国展開する中堅。前2014年3月期のフィットネス事業は、売上高122億円と業界9位ながら、営業利益は37億円とトップだった。駅前立地の多い同業に比べ、住宅地に近い“生活立地”に出店を進めてきたのが、成長の秘訣と いえる。2015年3月期も売上高、営業利益で過去最高の更新を見込む。ただフィットネス業界で東祥のような例はまれだ。
■業界No.1 コナミ 業績ピークは2009年
首位のコナミスポーツ&ライフは2001年、コナミがマイカルから買収したピープルが前身。2003年3年期には、のれんなどの減損475億円を計上したため、コナミの連結決算も赤字に陥った。健康サービス部門の業績を見ると、ピークは売上高が2009年3月期の899億円、営業利益は2007年3月期の 75億円となっている。
巻き返しに向けコナミスポーツは頻度別会費を昨年導入。フィットネスは通常、月に何回通っても 会費は同じ。多忙で頻繁に通えない若年層には「払うカネにバリューを感じられない」(同社)。それを月2回利用で3100円~、回数制限なしで8940円~(税抜き、施設カテゴリーにより金額に幅がある)などと、変更したのだ。一時的な単価減で前期は営業赤字だったが、若年層を軸に新規入会が増えているという。
■業界No.2 セントラル 業績ピークは2006年
業界2位のセントラルスポーツは、売上高では前期が過去最高だが、営業利益は2006年3月期の29億円がピーク。3位のルネサンスも売上高は前期、営業利益は2006年3月期の25億円が頂点だった。「大きく動いたのは08年のリーマンショック後。子ども向けスクールは底堅かったが、大人の会員はジワジワ減った」(セントラルの松田友治執行役員)。
■リーマンショック(2008年)以降 若年30代→中年60代へ
2008年のリーマンショックで収入が激減した現役世代は、月1万円前後の会費を嫌い退会。だがその後も通ったのは誰か。それはセントラルの年齢別会員比率を見ても明らかだ。今年3月末と10年前の04年3月末では、30代以下が全体の48%から26%へほぼ半減。逆に60代以上は18%から37%へと倍増した。寝たきり防止 、介護予防など、切実なニーズのあるシニア層が、大量に増えたわけだ。
ただ、その団塊世代は70歳に差しかかり、いずれフィットネスに通えなくなるのは必至。彼らを囲い込むため、フィットネス各社は介護施設型店舗を開設したり、自治体から介護予防向けの事業を受託するなど、あの手この手の施策に躍起となっている。
■24時間営業や女性専用も
中でもシニア層向けに成功したのは、米国生まれの女性専用小型フィットネス「カーブス」だ。プールなどもある総合型フィットネスに比べ、カーブスはマシンジムが中心。会費も安く、1回30分で終了、という手軽さが売りである。
日本ではカラオケ店運営のコシダカホールディングスが08年に事業を買収。女性専用ながら、60代以上が58%、50代以上だと84%を占めるという、シニア寄りの年齢構成である。今年10月には、日本進出10年弱で会員64万人、1500店突破を成し遂げた。
総合型で吸収し切れないニーズを狙う小型店はシニア向けだけにとどまらない。ティップネスは今年3月、若年層も念頭に24時間営業の小型マシンジム「ファストジム24」の出店を開始。売上高は2008年3月期以降停滞ぎみだったが、「成長戦略として推進するファストジム24に大いに期待している」(日テレ)という。
女性専用も熱い。ルネサンスは専用スタジオ「ドゥミルネサンス」、セントラルも同「ヨガピス」を、首都圏などで次々開業。小型店の陣取り合戦に拍車がかかっている。熟感あるフィットネス業界だが、2013年度には市場規模3000億円、会員300万人の大台に乗るなど、成長余力はある。コナミやセントラルのように、五輪などで自社の有力選手が活躍するたびに、宣伝効果を享受する企業も少なくない。今回、M&Aの対象となったティップネスのように、異業種傘下にある企業を軸に、再編はまだ続きそうだ。
◆◇◆ 週間東洋経済 2014/12/21 ◆◇◆