フィットネスクラブ事情に詳しい”業界通”と食事をしました。業界内で昨今話題の某クラブの経営改革について面白い話しが聞けました。要するに「バラダイムシフト」の一例です。
パラダイムシフトとは構造的な枠組みが微妙にズレることです。このズレが生じることで今までOKだったことがNGになる。例えば、ちょっと大袈裟な話しで恐縮ですが、保守的なイスラム諸国の独裁政権がドミノ倒し的に崩壊。それもツイッターやフェースブックといったソーシャルネットワークが火付け役になった。また、身近なところでは有名大学の入試事件。右手は答案用紙に書き込みながら左手で携帯メール。YAHOO!ネットへ投稿する新手のカンニング登場。あれもこれもパラダイムシフトの一つの現象だと言えます。
フィットネスクラブでもパラダイムシフトが静かに起きている。施設(店舗)を構え、固定エリアをマーケットにした『待ちの商い』ですから、クラブ経営には4+2の6つのファクターの総合力が大事。つまり表向きで数値化できる①立地、②施設、③価格、④サービスの4つ。立地も施設も固定性が高いのでオープン後の改善変更が難しい。が、価格とサービスは流動性が高いので改善変更が効く。この裏側に数値化できない2つのファクターが潜んでいます。こちらは目に見えないので厄介。それは⑤環境、⑥意識です。トップ(経営者)の資質と見識が問われるわけです。
“業界通”から聴いたことで興味深かったのは、月会費を思い切ってほぼ半値へダウンしたことで経営改善に成功した事例です。もともと月会費は種別毎に複数あったのを単純に一本化した。その後30~40代が急増。新規の7割が過去にどうかのクラブの会員経験者。全くの未経験者は3割だけ。何と千数百人が増えたとか。顧客数が伸びたとは言え、単価額が下がったわけですから相殺すればどうなるのか。一概に喜べないのではと思いきや、クラブに活気が湧いてきた。これが何よりの収穫だと強調する。納得。昔から『待ちの商いは活気が命』。古今東西、サービス業の原点はそこにあるからです。
その日の夜、TVニュースを観たら、かつて国営的民間企業だったJALのジャンボジェットのラスト運行便が映し出されていました。以前、専門家は「ジャンボジェットは経済合理性がある」と自信げに言っていた。それが今では「大量大型輸送は合理性がない」と逆なことを言う。いい加減な”専門家”が実に多い。ジャンボジェットは古い時代の大いなる遺産なのだそうです。一方、ローコストキャリア(LCC)と言われる低価格でサービスを簡素化した格安航空券が話題になっています。LCCは東南アジアから始まった新手のサービスです。ジャンボジェットもLCCも「パラダイムシフト」の一つと言えます。
これまで「常識ダ」とか「当り前ダ」とされてきた概念や観念がいつの間にか消え失せる。そして前とは逆な見方や考え方が好しとされる。世の中には時折、このような枠組みのズレが生じる。始めはほんの少しの微妙なズレなのですがやがて大きな変化になる。少しのズレを一足先に感じ取る。そんな感性の高いヒトになりたいですね。
AD研究所 今野 純