どの国のどの人であっても、その人が持つ最も美しい姿は「笑顔」です。笑顔ほど魅力的なものはありません。素晴らしい笑顔と態度は人間関係の基礎です。
AEA理事会で<3.11東日本大震災>についてオラルレポートをしました。関係者各位から沢山のメールや電話を頂戴しました。ご心配いただいた人々への感謝の気持ちを精一杯の英語で申し上げました。帰り際、理事の一人から質問。「テレビ放映の中で被災者へのインタビューがあり、その人は”微笑”ながら応えていました」「信じ難いほどの悲惨な状況下にある人がなぜ”Smile”なのか?…私には理解できませんでした。なぜですか?」とのこと。
私が答える一瞬前に隣席していたルース・ソーバさん(AEA創立者/現ATRI会長)がスーッと立ち上がり「私が知る限り…」と前置きして話し始めました。つまり…
日本人は私たちアメリカ人以上に自分と他人の双方の人格と名誉を重んじる人々です。彼らの微笑みには二つの側面があるとハーマン・カーン著の本の中で読んだことがあります。一つは私たちと同じ微笑。もう一つは苦しい時、恥ずかしい時、ガッカリした時、などいつもとは違った状況の時にも彼らは微笑むのです。微笑むことが自制心を失わないようにする強い意志の現われなのです。
ドッキ!…その通りです。さずが第38代米国大統領法律顧問ジャッカネン博士の長女(ルースさんの旧姓はジャッカネン)。その博学ぶりの一端がチラリと見えた瞬間でした。早速、帰国後、彼女が引用したハーマン・カーン(小泉八雲)の本(知られざる日本の面影)を読んでみました。本には『…日本人の微笑みは生活の掟になっている。心は千々に乱れているような時でも、顔には凛とした微笑をたたえる。それが社交上の義務なのである…』と書かれていました。
八雲が観た日本人は明治時代の人々です。いま平成の日本人とは文化の背景が全く違っているはずです。が、笑顔は愉快な時もそうでない時も、今回のように生活基盤の全てを一瞬で失った最悪の時であっても、自制心を保とうとする強い気持ちが働き、米国TV撮影クルーの前に立ったその人は微笑みながらインタビューに応じたのでしょう。もし私がその人と同じ立場になった時、同じように自制心が保てるか否か不安ですが、日本人の微笑む文化を受け継いでゆこうと思いました。
AD研 今野純